ようやく少しずつ、スピーチの練習をしていくことになった。いわゆるエクスポージャー(曝露療法)である。
少しずつ、というのはスピーチすることが不安場面といっても闇雲に不安場面に挑めば良いというのではなく、不安感が低い状況から、徐々に不安感の高い状況へともっていく。
まずは自分ひとりで鏡に向かって。
全然緊張しない。
不安度を 0~100 で表すとしたら、0。
次はセラピー時にクリニカルサイコロジストの前でやってみる。
5分ほど。話し始めると同時に不安が込み上げてくる。
ただの練習なんだから、と自分を落ち着かせ、続ける。とにかく続ける。すると不安が下がってくるのを感じる。よかった、この調子だ。
By: Gwyneth Llewelyn
なんとかやれた。緊張してとちったし、不安に巻き込まれそうになっては、復活し...の連続だったけど。
不安度 70 くらいだったかな。
すごい疲労感。
そこへジャネットさんが
「さあ もう一度やってみましょう」と一言。
もう一度立ち上がり、同じ発表をプレゼン。
あれ? さっきほど悪くない。なんとか話し続ける。さっきよりはなめらかに話せたような。
不安度 50 くらい。
「すごいすごい すっごく上手になって。これはもう、すごすぎる!!! 素晴らしい上達ぶり。さあ、この調子でもう一度」
そんなことないよ、全然ダメだよ、と瞬時に否定しそうになる。習慣になっているのだ。
けど あえて思考回路を変えてみる。変えなきゃいけない。
「ちょっとうまくなってきた もういちどやればもっとよくなるはず」と言ってみた。試しに言ってみた。
そうだ。よくできたのだ。とってもがんばったのだ。えらい。えらい。と、自らを説得するように心のなかでつぶやく。
もう一度プレゼンをやってみた。
また少し良くなった。
不安度 40 くらい。
そしてまたジャネットさんに褒めてもらう。
誉め言葉を瞬時に否定してしまいそうになる。否定する感情が自動的に生じる。そこで私は努めて意識的に誉め言葉を受け入れようとする。よくできたのだ、よくやった、と言い聞かせる。なんだか笑えるほどぎこちない。
その日私はご褒美にカフェに寄り美味しいカフェラテを飲んだ。いわゆる、自分へのご褒美というやつだ。
すごくよくできたのだ、ということをしっかり自覚するために、記念に何かこうこうしなきゃいけない。そう思ったからだ。