さて、ふたりのクリニカルサイコロジストの前でのプレゼンをクリアしたので、次のステップへと進んだ。
次は、リアルな状況でやってみるのだ。
リアルな状況。それはこれまでのエクスポージャーと本質的に異なる。
これまでやってきたプレゼンはいわば架空の状況でのことだった。
ふたりのクリニカルサイコロジストは私の病気を知っているし、不安な状況に私を慣らしていくために作りだした人工的な環境下でプレゼンを行ったのだった。
リアルな状況で、治療外の環境でプレゼンをしてみること。これは大きなステップだった。架空の状況でプレゼンするのと、リアルでやるのとは心理的な負担度合いが全く違う。
不安ではあるが、どうにかして、トライしてみたい。どうにかして、リアルな状況においてプレゼンをやってみたい。そう思った。
けど、突然大きな学会でやってみるのは危険が大きすぎる。失敗する可能性がある。不安発作が起きてしまうかもしれない。
そこで、ジャネットさんと私はリアルでありながら少しカジュアルな環境でプレゼンする機会をつくることにした。近所の大学で軽くプレゼンしてみる。これでいこう。
私は、ある小さな大学にメールを送ってみた。これこれこういう研究をやっていて、よろしければそちらのゼミか何かでちょっとした発表をしてみようかと思うんですが...と。
するとすぐに反応があり、まあどうも、どんどんやってくださいな、助かります。ということだったので、早速スケジュールを組んでもらえた。「すみませんねえ、ボランティアでやってくださるなんて」
私としては、すみませんねえ、プレゼンの練習台になってくださるなんて
というところだったんだが、もちろんそんなことは言わなかった。