認知行動療法を経た自分の変化としてもうひとつある。社会不安障害についての自分自身の考え方が変わるにつれて、そのことを秘密にしておこうとは思わないようになってきた点だ。
初回のセッションでジャネットさんが「周りの人に言っておくのもいい」と言ってくれたが、私は頑なに「イヤダ」と聞かなかった。
そんなことを周りに言ったら、職は危うくなり、将来はなくなり、人生が終わってしまう。そんな恐ろしい選択肢を一体どうしてジャネットさんは何でもなさそうな顔して提示するの? ちょっとおかしいんじゃないですか?
これは絶対の秘密なのだと言うとジャネットさんはそうかな?という顔をしていた。社会不安障害を患うという恥ずかしさをジャネットさんは理解していないんだな、と私は解釈した。
ところが、認知行動療法を受けるうちに、私自身がそうかな?と思うようになってきた。
そしてだんだんと社会不安障害でなにが悪いんだと思うようになってきた。
さらにポジティブ思考が定着すると、社会不安障害だなんて、めっちゃカッコイイじゃんみたいな感覚すら生じてきた。
すると、周りの人たちに言いふらしたくなってきてしまったのである。しゃべりたくってしょうがない。
ねえ、みんな、聞いて聞いて。私ったら社会不安障害なんだよ。どうだ。参ったか!
そんな折、以前ブログに書いた新しい研究者友達のスーさんとまたおしゃべりする機会があった。
「午後はお医者だからそろそろ行かなきゃ~」と言ったら、
「おや、どこか調子が悪いのですか」とスーさんが聞いた。
「社会不安障害でね、発作を起こしてしまったりする体質なんですよ。それで、発作が起きそうになってもコントロールできるようになるプログラムを受けているんです」
「おー、そうですか。あなたもですか」
えっ、あなたもって?
「私もそういった体質なんですよ。いやあ、研究者ってみんな結構そういうふうなんですね。ほら、考え過ぎて、コントロールできなくなってしまうところがありますよね。私は最近不眠症がひどくてねえ。ヨガなどやるといいですよ」
この人もちょっと自律神経が乱れがちな体質だと言う。
なんだ、そうだったのか。じゃあ、参ったか!て感じになれないなあ、と残念な気持ちにすらなるから不思議である。