作家には社会不安障害ではないかと噂されている人たちが多い。
たとえば、『緋文字』で有名なホーソーンは、人を避けることにかけてはまったく尋常でないレベルで、村人が向こうから歩いてくるのが見えたりしたら、咄嗟に道から飛び出して野原を駆けて逃げて行ったとか。
でも、その時代に社会不安障害という認識は世間になかっただろうし、社会不安障害っぽい逸話が残されている作家が多いけれど、現代の作家で社会不安障害であると公表している作家は、オーストリアのノーベル賞受賞作家であるエルフリーデ・イェリネクしか見つからなかった。
エルフリーデ・イェリネク (ノーベル賞受賞作家)

ウィーン大学で音楽と芸術史を学ぶが、不安障害のため勉強を断念した。
イェリネクの生き方を見ると、社会不安障害は必ずしも内気な性格ではないと思えてくる。イェリネクは政治に積極的に関わり、政治的な発言を続けていた。フェミニストでもあり、積極的な活動を続けた。
ノーベル賞授賞式には参列できなかった。代わりにビデオを撮り会場に送った。社会不安障害であること、広場恐怖症であること、ゆえに授賞式に行かれなかったこと、不安障害があったからこそ、小説を書き始めたのだということなどをビデオで明かした。
のちには、不安障害のために映画館に行かれないこと、飛行機に乗れないこと、いつか死ぬ前にニューヨークに飛び摩天楼が見たいということなどを明かす。
ソース: Elfriede Jelinek