社会不安障害なら留学しよう

みたいなことを言われたことがある。

大学生のときだ。

ゼミの発表で発作を起こし、大学のカウンセリングロームで相談した。

当時アメリカ留学を控えていたし、たくさんの不安が私の心を取り巻き、ほとんど鬱状態にあった。

担当してくれた方はアメリカの大学院で心理学を学んでいて、留学に関してもいろいろと教えてくれた。

そのときは、自律訓練法をやった。足が重くなって、手が重くなって...とやっていくあれだ。体のコントロールが幾分自由になり、それなりの効果があった。
で、ある日私に言った。

「あなたみたいな人はね、アメリカに行くと、よくなると思うよ」

へっ?

なんで?

と思った。こんなへこたれなのに、不安に負けて、コントロールもできない奴なのに、すでに鬱なのに、この状態でアメリカに行って平気? しかもアメリカに行くとよくなる?

なんで?という顔で見た。でも彼女はそれについてはそれ以上のことを言わなかった。だからそのときは分からなかった。

今になって、彼女の言わんとしていたことが分かってきたような気がする。

たぶん、環境を完全に変えてしまえば、私みたいな場面的に不安障害が起こるような人は、よくなったりするんじゃないの。そんなことが言いたかったんじゃないかと思う。

特定の場面に反応してしまう。不安発作に襲われる。または声が出なくなってしまう。

そういったふうで場面や環境に影響を受けやすい場合、同じ場で奮闘させるより、単純に別の場面に移してしまえば解決に近付いたりもするだろう。学校で声が出せなければ、転校すると、環境が変わったために声が出せたり。

留学して、言葉も、文化も、習慣もまったく異なる世界に放り込まれる。

すると意外にも、不安が和らいだりする。

それまで不安が引き起こされる場面と、似ているようで似つかぬ、異なる場面になるからだ。

確かにアメリカ留学時代、授業でのプレゼンは多くあり、私も多少緊張しつつもなんとかこなすことができたのだ。プレゼンの場の雰囲気も和気あいあいとしていて、日本の大学での発表よりもリラックスできた。

そうそう、これも成功体験だ。今、思い出した。アメリカ留学で社会不安障害が良い方向に向かったのに、その後、私の不安障害は再発し、悪化し、成功体験は忘却のかなたに押しやられ、

「これまでの人生の間で私がプレゼンを行い不安発作が起こらなかったことはない」

などと極端な認識をのちにクリニカルサイコロジストのジャネットさんに告げることになった。

認知の歪みって恐ろしい。

生活を完全に変えてしまう。環境も含めて変えてしまう。ぐるぐる悪循環を繰り返す生活から抜け出すことができる。留学でなくても、なんでもいいかもしれない。

荒療治のようで意外とうまくいくこともあるのでは。そんなふうにも思う。

作成者: administrator

Mental health blogger, researcher, social anxiety/selective mutism survivor.