学会に向かう前のある出来事

学会に向かう前に、同僚のリサさんとの小さなミーティングがあった。

リサさんは研究室ではなく自宅に来てと言う。

家を renovate (リフォーム)したから、と。

そうか。じゃあ、見に行ってやろうではないか☆ とお邪魔してみた。

リサさんは私が大学院生のときセクハラ教授から逃れるためにいろいろと助けてくれた。

だからとても感謝している。

そういう経緯があったので、リサさんも私の様子を気にかけてくれている。

ところで、大学院留学をすると、アカハラにあってしまう留学生は残念ながらたくさんいる。

アカハラのうち最も多いのがセクハラだ。論文指導教員が学生を狙う。

決して統計をとったわけではない。私の周りだけでも、知っている限りで、5割以上の日本人女性大学院生が論文指導教員に言い寄られた経験がある。

国内の学生よりも留学生が狙われやすい。

そのうち4割くらいはセクハラと分類される悪質なもの。

セクハラと許容範囲にある言い寄り方とどう違うの?

っていう疑問は確かにあり、線引きは難しかったりもするが、教員が大学の個人情報データベースにアクセスして特定の女子学生の電話番号を入手したり、指導と称して、研究室でふたりきりになり体を寄せてきたり...教員がその学生に対する上位の立場を利用したやり方。

驚くことに教員と付き合ってしまう学生も結構いる。

相思相愛というか、合意の上の関係というか、利害の一致というか。そういう場合はセクハラにならない。

留学準備というと英語の勉強ばかりが語られるが、私が思うに留学準備のうちで最も大切なのは、留学先の国でトラブルにあった際の対処法を知っておくことではないだろうか。

泥棒にあったらどうするか。
人種差別されたらどうするか。
レイプされたらどうするか。

オーストラリアでは学内のセクハラなどは大学が対応してくれる。

しかし解決しなかったり、大学がもみ消しに走ったり、場合によっては大学を相手に裁判を起こさざるを得ない状況も考えられる。

そういうこともあるので、留学する国の社会制度、大まかな司法制度や、訴訟の起こし方などは知っておいたほうがいい。

さて、話を戻してリサさん宅。

「あら~、髪を切ったのね。 Nice haircut♡」

えっ? 自分で切ったんだけど...

リサさん宅はリビングを建て増ししてきれいになっていた。

おや、窓の外にバナナが実っています。連なってて、たくさん。すごーい!

1081-1259261383qjs5

 

ところがリサさんちょっと首をかしげている。

よく見ると、それは隣家のバナナだったのだ。

それなのに、バナナの実も、でっかい葉も、リサさん宅に突き出ている。

これじゃ、隣の敷地からはバナナに手が届かないでしょう。

「これは、もらっちゃっていいんじゃない? だってあなたの敷地内に実がなってるもの」

私はふざけて言う。

「お隣さん少しバナナくれたよ。美味しかった」

それにしても、リサさんのうちは小さな子がいるのに、勝手にバナナ取ってしまったりしないのね。

さすが、リサさんの子だけあってお行儀がよいのかな。

「学会ではどういうこと発表するの?」

聞かれるとべらべらと喋る。リサさんは「おもしろそうだね」と言いながら聞いてくれて、最後に、

「学会ってね、聴衆の中に必ずひとりはすっごい馬鹿な質問してくる奴がいるんだよ」

そうぽつりと言って表情を曇らせたかと思うと、リサさんはそのような連中がどんなに馬鹿かということを語り始める。

べらべらと語る。

止まることがないかのように続ける。

いつまでも続くかのようだ。

リサさんは、これまで経験した馬鹿な質問について、分類し始めた。

あんな馬鹿。こんな馬鹿...

終わらない。よくひとつひとつ憶えているものだ。

私の長い英語圏人生において、こんなに stupid という単語が連発されるのを聞いたことがない。

「学会がんばってね。でも聴衆は大したことないからね」そう、最後に言ってくれた。

リサさんのアドバイスはそれだけだった。

後から考えてみると、どうも私が学会というものをよく分かっていないで過剰な期待を抱いているということを、リサさんは察知したのかもしれない。

後から考えると、リサさんはのアドバイスはある部分で的を得ていた。

作成者: administrator

Mental health blogger, researcher, social anxiety/selective mutism survivor.