高所恐怖症を発症しそうになった事件

発表が無事終わったので、そうだ、楽しもうということで、観光してみた。

イタリアなので塔がある。

そうだ。あれに登ってやろうと高くそびえる塔に対してなぜか上から目線の口調になる私。

塔の内部には細い階段がぐるぐると張り巡らされていて、人が登れるようになっている。
社会不安障害と向き合う

はじめは順調だった。

古い塔は少々傾いている。内部は薄暗く、光は窓から少々の日光が差し込むのみ。

内壁にも古さが滲み出ていて、質感があり、よいのだが、なんだか、昔々の怨念のようなものも染み付いているような感じもあって、結構不気味でもあった。

そして、それはまだ4分の1も登っていないのに突然のようにやってきたのだった。

不安発作

こわい~

私は下の写真の矢印のあたりでうずくまってしまったのだった。
社会不安障害と向き合う
矢印は不安発作発生地点を示す 塔の内部で人知れずうずくまる怪しげな奴を想像してみてね

どうしよう。戻ろうか。

でも、そうしたら、また苦手意識が定着してしまう。名実ともに高所恐怖症となってしまう。

こんなに不安障害を治そうと日々頑張ってきたのに、こんどは高所恐怖症でふりだしに戻ってしまうんだろうか。

このまま登り続けようとしたらどうなるだろう。

そのうち誰かが塔の内部でうずくまる日本人を発見。救急車で運ばれ、日本大使館に連絡が入り、私は日本国に迷惑をかけてしまう。

究極の選択 どっちがいいか 逃げるか闘うか

選択肢の間を、あっちもやだ、こっちもやだと、意識が行ったり来たりしているうちに、なんだか落ち着いてきた。

そうだ、落ち着こう、落ち着くんだ

で、呼吸を整え、少しその場で休んでみた。すると、おや不思議、平気そう。

これならいけそうだ。

ゆっくり、呼吸を整えつつ、階段を上る。あまり下を見ないようにします。

塔の上からの景色を想像してみることにする。うん、塔の上はきっときれい。

そしたら、登れた! 塔の上に辿り着いた。

社会不安障害と向き合う
塔の上からの景色

さて、降りるのはもっと怖いだろう、と思ったのに、どういうわけか全然怖くない。下までの距離がもっと見えてしまうから、怖いはずだと思ったんだけど。

そうか わかった

呼吸だ

呼吸が楽なんだ。降りるときは。

登るのは大変。97.2メートルの高さを階段で登って行くのだ。

初めは張り切って速足で登っていて、息が荒くなっていたのだ。

同時に恐怖が膨らんでいった。

ちょっと怖いな、というちいさな恐怖が過呼吸状態によって肥大化したんだ。

Fight-or-flight response (戦うか逃げるか反応)が起こり、不安が膨らんだんだ。

降りるときは呼吸が穏やかなので不安は起こらない。

なんだ。それだけのことだったのかあ

嬉しくなったので、下りはやたらと機嫌が良い。

登る人たちとすれ違うと、挨拶したり、「もう少しですよ~」と励ましてみたり、「写真でもお撮りしましょうか」などとサービス精神もやけに旺盛。

ついさっきまで不安に怯えていたくせにね。

投稿者: administrator

Mental health blogger, researcher, social anxiety/selective mutism survivor.